
本年も平日にも関わらず、多くの方にご参拝いただき本当に感謝しております。お供え物も、皆様方の想いの感じられるすばらしい贈り物ばかりでございました。中にはお供え物をお送りくださった方もいらっしゃり、本当にありがたく大切にお供えさせていただきました。
また、当日は参拝したくても、できなかった方も多くいらっしゃったことと存じます。皆様方の想いを大切にお地蔵さま、そして水子さまにお届けさせていただきました。
この度の法要は、例年の如く、お地蔵さまのお歌の奉納から始まり、ご詠歌の奉納、献灯・献花・献香、そして七名もの僧侶による地蔵尊法要、そして最後に山本陽子さんのお歌を皆様に聞いていただきました。
読経内容を本年は少しだけ変更させていただき、今まで以上に深い内容のお経をお唱えさせていただきました。
その分、少し長めの法要になりましたが、毎年参拝くださっている方の中には、おわかりくださった方もおいでと存じます。その変更内容もふまえて、本年度もすばらしい法要になったことと存じます。
法要が終わった後、毎年お話をさせていただいているのですが、今年のお話は、少し悲しいお話ですが温かい親子愛を描いたお話をさせていただきました。
これは15年程前、実際にあったお話でございます。悪性リンパ腫と診断された小学校3年生のお子さまと、母親とのお話です。悪性リンパ腫という病気は、リンパ節などが腫大する血液の癌で、治療法としては、放射線治療や抗がん剤をつかう科学治療といわれる治療法をするのです。ただ、この治療は激しい吐き気や副作用と戦わなくてはならない、何も知らない子供にとってはあまりにも残酷な治療なのです。
医者は母親に、この治療をしたとしても半年の命だと宣告されます。その宣告を聞いて母親は悩まれたのですが、この子の寿命が少しでものびるのであればという思いで、治療をさせる決心をされたのです。
そして治療が始まったのですが、想像以上に苦しまれて、嘔吐をくりかえすようになり、食事も充分に食べられなくなりどんどん痩せてしまわれたのです。また、薬の副作用で、髪の毛もすべてぬけてしまったのですが、それでも一生懸命病気と闘われたのです。母親はこの苦しむ息子の側について、朝から晩まで時間の許す限り、一生懸命励まされたそうでございます。
そんな息子さんに一つだけ大きな心の支えがありました。それは学校のクラスメイトからの手紙でした。
クラスメイトからの手紙は毎日のようにとどきます。手紙が届くたびに、息子さんはすべての手紙を嬉しそうに母親に読んで聞かせてくれたのです。ところが1ヶ月ほどたったころから毎日とどいていた手紙があまり届かなくなってしまうのです。
そこでお母さんがお友達のふりをして、毎日手紙をとどける決心をされるのです。お母さんと息子さんの文通が始まります。息子さんは、母親の書いた手紙とは知らず、毎日、そのお友達からの手紙を読むこと、そしてお返事を書くことに大きな生きがいを感じるようになったのです。
いつのまにか半年の命と宣告されてから三年の月日が経っていました。やりとりした手紙の数は1000を超えていたそうです。
そしてある日、いつものように「返事を書いたからだしておいて」と預かった手紙。その手紙にはお母さんのことが書かれていました。
お母さんがプレゼントしてくれたものや、お母さんに怒られたこと、退院したときのためにと勉強を教えてくれたこと、その日の手紙はお母さんのことばかりでした。鉛筆を持つのもやっとなほど弱っていたため、震えた字でしたがぎっしりと書かれていました。
お母さんは息子がこれほど自分のことを思ってくれていたと感動し涙されるのです。
そして最後の一文。
「これからも、いつまでも二人で手紙を交換しあえたらいいね。ほんとうにありがとう・・・お母さん」
お母さんは泣き崩れました。
いつから知っていたのでしょう?息子を励ますつもりが、逆に励まされていたのだと知るのです。
息子さんは自分の最期を感じ、お母さんに感謝の気持ちを伝えたかったのでしょう。
そして、その手紙を最後に、数日後、闘病生活3年を含めた11年間という短い生涯を終えたのでございます。最後は安らかな笑顔だったそうでございます。
友達に成りすまして返事を書く、その思いやりを母の愛情として受け取ったからこそ、息子さんは最後まで知らないふりをしていたのです。最後まで母の愛情に包まれて息子さんは本当に幸せだったと思います。
そして最後に息子から最高の思いやりの心を受け取ったお母さん。自分より先に子供を見送るということは、人生における最も大きな苦しみです。しかし、この息子さんは残されるお母さんに、生きる勇気を与えてくれたのではないかと思います。笑顔と感謝の言葉をもって・・・
「ありがとう・・・おかあさん」
いつまでも忘れることのない言葉、今後生きていくうえでの勇気、希望になっていくことと思います。
私がこのお話を通じて申し上げたかった事は、今を精一杯生きること、そして、いつも人に思いやりの気持ちを持つこと。その心を大切にしていただきたいということでございます。
その精一杯の心は、人のためだけではなく、自分自身が前向きに生きるための勇気にもつながることでしょう。
召されたお子さまを、これからも精一杯愛してあげるお心も大切になさってください。
たしかに子供たちは、お地蔵さまに救われお慈悲を学び、美しい世界でお友達と仲良く幸せにお過ごしでございます。しかし、召されたお子さまにとって、お地蔵さまでさえも与えることのできない、とても大きな喜びが1つだけございます。それは、親の愛情なのです。
この地蔵尊法要では、そんな皆様方の愛情、そして感謝のお心というすばらしい贈り物をお届けさせていただきました。多くの愛に包まれた最高の法要になったことと存じます。
これからも皆様方にとって「癒しのお寺」としてありつづけるよう、日々精進してまいります。
いつまでもお子さまたちの幸せな笑顔を願って・・・
合 掌
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