本年も平日にも関わらず、多くの方にご参拝いただき本当に感謝しております。お供え物も、皆様方の想いの感じられるすばらしい贈り物ばかりでございました。中にはお供え物をお送りくださった方もいらっしゃり、本当にありがたく大切にお供えさせていただきました。
また、当日は参拝したくても、できなかった方も多くいらっしゃったことと存じます。皆様方の想いを大切にお地蔵さま、そして水子さまにお届けさせていただきました。

この度の法要は、例年の如く、お地蔵さまのお歌の奉納から始まり、ご詠歌の奉納、献灯・献花・献香、そして七名もの僧侶による地蔵尊法要、そして最後に山本陽子さんのお歌を皆様に聞いていただきました。
また、法要の途中では、震災の被害にあわれた方への追悼の意も皆様でお祈りいたしました。

法要が終わった後、毎年お話をさせていただいているのですが、今年は私の伯父についてのお話いたしました。そのお話の内容を少し紹介させていただきますので、ご覧いただければ幸いに存じます。

私の父の兄は、野沢照岳と申します。これは照岳おじさんのお話です。
照岳おじさんは信貴山の奥の院の住職をされており、妻と4人の子に恵まれた家庭でした。
この照岳おじさんは平成13年、脳梗塞で倒れられたのです。すぐに病院に運ばれまして、大手術を受けられました。手術は無事に終わったのですが、術後は想像を絶するほどの激しい痛みが襲い、嘔吐を何度も繰り返し、毎日毎日、残酷な苦しみとの闘いでございました。また、脳の手術ということで、断片的に記憶がなくなってしまったり、記憶力が衰えたりという後遺症もございました。それでも日が経つごとに少しずつですが、痛みも和らぎ順調に回復していきました。
ところが、平成17年の初めごろに、脳に腫瘍が見つかりまして、また手術をしなければならなくなったのです。しかし、以前手術をしたときの恐怖が甦り「手術は絶対に受けたくない」と、頑なに拒否されたのです。家族がいくら説得しても、『手術』という言葉を口にするだけで、照岳おじさんの身体が震えてしまい、完全に身体が拒絶してしまう状態だったのです。

そんなとき悲しい出来事がありました。照岳おじさんの一番末っ子は、当時17歳で幸四郎というのですが、この幸四郎くんが、事故で死んでしまったのです。これは、新聞やテレビのニュースでも取り上げられた事故だったのですが、奈良の山道で原付バイク2台と対向車線をはみ出してきた車が正面衝突、バイクに乗っていた高校生2人が死亡。
そのうちの1人が私のいとこの幸四郎くんだったのです。バイクの免許をとったばっかりで、たいへん喜んでいたそうでございます。

入院中に、最愛の息子が、事故で亡くなった事実を知ってしまった照岳おじさんは、病院に響き渡るくらいに絶叫されて、夜までずっと涙を流しておられました。
その日の就寝前に、病院の先生を呼ばれてこう話されました。
「今日、私の息子が亡くなったという事実を聞きました。この息子の所へ逝けるのであったら、私は死んでもいい。もし手術がうまくいって助かったのであれば、残りの余生を亡くなった息子のため、そして嫁や息子たちのために大事に過ごしたい。死んでも、生きてもよい。覚悟はできました。先生、手術をお願いいたします。」と言われたのです。
そして、平成17年5月、手術をしなければならない時から日が経っていたにもかかわらず、手術は無事に成功。術後の激しい苦しみにも必死に耐えてこられました。
ところが不幸は続くものでございます。同年の暮れに、胃がんが見つかってしまうのです。まだまだ脳の術後の苦痛と闘っている最中だったので、胃がんの手術は本人にとってあまりにも酷な手術になるのです。
そこで、照岳おじさんに手術を、どうされるか尋ねると、まったく嫌がらず胃の摘出手術を受けられたのです。

そこには、以前のように病気から逃げる照岳おじさんの姿はどこにもございませんでした。この照岳おじさんの勇気は、まさしく幸四郎君が与えてくれたすばらしい贈り物でした。
ただ、永い入院生活で身体はぼろぼろでしたので、手術は成功しても、そう永くは持たず、平成18年の3月、幸四郎くんの元へと逝かれました。65年間の生涯でございました。

照岳おじさんのお葬式の最中、奥さまがずっと握っていたものがございました。「これがあったから、あの人は病気の苦しみから逃げることがなかったんですよ。」と見せていただきました。それは、照岳おじさんと幸四郎くんが肩を組んで、とても幸せそうな笑顔で写っている一枚の写真でした。
私は、この写真があるかぎり、病気に立ち向かう素晴らしい照岳おじさんの姿と、その勇気を与えてくれた幸四郎くんの姿をいつも感じることができるのではないかと思います。

お葬式の最後、息子たちは参列された方に「父は僕たちの誇りです。僕たちには、すばらしい父の血が流れています。どんなときも、どんな困難からも逃げ出さなかった父のように精一杯、生きることを誓いたい。」と、胸を張って申しておりました。
私は、死の恐怖や苦しみの恐怖から決して逃げようとせずに立ち向かう親の生き様というものが、子供にこれほどまでに影響を与えることができるものなのだと改めて感じました。
あの時の、息子たちのすばらしい姿は、今でも心に残っております。

皆様方も、天国の赤ちゃんの親でございます。精一杯生きよう、精一杯困難に立ち向かおうとする気持ちは、天国の赤ちゃんにとっての誇りの姿でもございますし、周りの方に大きな感動を与えることができるのです。

そして、今までと同じように召されたお子さまを精一杯愛してあげるお心も大切になさってください。あの子を深く愛してあげることによって、私たちも、あの子の笑顔のために自分には何ができるのかとか、どういう自分をあの子は喜んでくれるのかという、本当の宿られた意味を感じる、よい機会になるのでございます。

今年の地蔵尊法要も、多くの皆様の愛に包まれた最高の法要になったことと存じます。

これからも皆様方にとって「癒しのお寺」としてありつづけるよう、日々精進してまいります。
いつまでもお子さまたちの幸せな笑顔を願って・・・

合 掌


追伸:法要のお申込された方で、授与品を授かりに来られる方は、9月24日までにおいでください。
寺務所は午前9時から午後5時までとなります。

2011/08/31(水) 14:13 未整理 PERMALINK COM(1)

COMMENT

心に沁みるお話でした。
ありがとうございました。
ちぃ 2015/03/15(日) 08:09 EDIT DEL

COMMENT FORM

以下のフォームからコメントを投稿してください